なぜクラゲを作るのか?
こう聞かれたとき、私は様々な答え方をしてきた。 浮遊感が好きだから・・・透明感が好きだから・・・子供の頃からクラゲが好きだから・・・
そのうちに、私がクラゲを作ったというよりも、このクラゲたちが勝手に生まれて成長してきたのであるという答え方があっても良いのではないかと思いついた。そうすれば、「なぜクラゲを作るのか?」と聞かれたとき、「こんな風に生えてくるんですよ」と作品を示して応じることができる。
モノを作るとき、ひとつではなく様々な形状からアプローチしてみるように、人工生命体の発生してきた過程も、ひとつに限ることはないと思った。
そこで、あるひとつのクラゲオブジェに対して、二通りの架空の発生の過程を制作し、並列して展示することにした。
Process1は、一つ目の架空の発生過程である「懸垂の思い出」 これは、空の星が連なって垂れ下がり、クラゲの幼生を産み出して、そこからクラゲが発生してくる架空の成長過程。
Process2は、二つ目の架空の発生過程である「キノコの思い出」 これは地面からキノコ状の、菌糸が伸びてきて、そこからクラゲが発生してくる架空の成長過程だ。
これらは小さな円筒状のガラスシリンダーに入れ、二通りの発生過程が互いに交差する波状に配置され交差点にクラゲオブジェがくるよう展示するのが理想だ。
同じ種類の生物なのに、全く異なる発生の過程が複数存在するということは、生き物の世界ではたぶんありえないと思う。 ありえないはずなのに、生きてそこに存在しているようにしか思えない、不思議なパラレルワールドを表現できたらという思いが制作を通じて湧き出てくるのを感じていた。
このテーマの続編として、自宅の庭に埋めた水槽(キノコからクラゲが生えてくる)と自宅の屋根に置いた水槽(星からクラゲが生えてくる)を夏休みの観察日記を書くために、夜な夜な水槽を覗いている子供を主人公にした短編映画を作ってみたい。